切り絵の先にあるメッセージ。アーティスト平野千明が表現する現代型進化論
Numero TOKYO 5月号『モノトーンの表現者たち』でも紹介したアーティスト平野千明のウサギをモチーフにしたカットアウト原画をNumero CLOSETで抽選販売。(現在、2024年5月12日まで抽選受付中)
単なる切り絵作品ではなく、モチーフを切り出す行為そのものに彼のメッセージが込められている。
「僕の作品は機械的な表現をしていますが、かっこいい機械の生き物を作りたいというよりは、切り出すという行為に重きを置いています。というのも地球は46億年もの長い時間存在していて、そこから生命が誕生し、進化し、今に至ります。とんでもない長い年月、進化を続ける生物がいて、そう考えると人間はまだたった数百万年しか存在していません。恐竜は2億年近く存続し、昆虫はさらに長い年月、存在し続けています。人類が出現し、人とそれ以外の生き物とを区別するものは何かと考えたときに、人以外の生き物が自然と共存、共生していく道を選んだのに対して、人は唯一自然を切り開くことで進化を目指した生き物であることに着眼しました」
「他の生物が選ばなかった進化の形を、唯一選んだのが人類だと僕は認識しています。故に1層目に用意する白紙は、その自然という大きな枠組みの意味合いを持ちます。他の生物が上に乗せていったものを、人が唯一マイナス方向に切り開くという行為性を紙の裁断を通じ表現しています。存在しているものを切り抜く行為に、僕のアートの根幹があります」
「山にしろ、森にしろ、あらゆるものを切り崩し、新たな進化を目指したところから、白紙を切り崩した先に見えてくる黒という世界で、さらにそれを崩すことによって見えてくる新しい白の世界。その価値あるものを切り崩すという行いを表現しています。僕は自分の表現をカットアウトと呼んでいますが、平面でありながら下の方向を目指していくところがオリジナリティだと思っています。その行いを、昆虫といった自然界の象徴と人間が築いた機械構造を通じて一種のメタファーとして表現しています」
Photos:Ai Miwa
Interview & Text:Masumi Sasaki