黒いドレスに似合うシルバージュエリー「ASAMIFUJIKAWA」
シルバーの魅力を存分に活かした重厚感と、相反するセンシュアルなデザインで人気を博しているジュエリーブランド<ASAMIFUJIKAWA(アサミフジカワ)>。ジュエリーへのこだわりやコレクションについて、デザイナーのフジカワアサミにインタビュー。
ジュエリーデザインを始めたきっかけ
「ファッションデザイナーのアン・ドゥムルメステールが好きで、特に5連リングのデザインに影響を受けました。WERKSTATT MUNCHEN (ワークスタットミュンヘン)というジュエリーブランドのデザイナーKlaus Lohmeyerが、ANN DEMEULEMEESTERのジュエリーデザインをしていた時期があるのですが、すごく素敵で。“こんなジュエリーを作ってみたい”と思い、独学でジュエリーを作るようになったんです」
アン・ドゥムルメステールに惹かれた点
「ダークでシックなテイストに惹かれました。あとは、たいてい裾丈は長身の人でも着られるよう長めでしたが、彼女自身が小柄だったこともあり、丈詰めしてもかっこよく見えるバランスに作ってあると聞いたことがあって。実際に服をまとってみて、多々共感することがありました。トレンドに左右されすぎないスタイル、本当に自分がいいと思うものだけを形にして世に送り出しているアプローチの仕方も尊敬しています。いまはデザイナーを引退されて、パートナーと農園をされているそうで。そんな時間の過ごし方にも彼女らしさを感じます」
洋服ではなくジュエリーの世界へ
「実は学生時代から洋服のデザインにはあまり興味が持てなくて(笑)。洋服を着ること自体は好きでしたが、あまり立体物には見えなかったんです。家具やスカルプチャーのほうに魅力を感じていましたね。もっと彫刻のような立体物を作ることに興味があったんだと思います」
ジュエリーブランドを立ち上げた原動力
「“自分が身につけたいアクセサリーを作りたい”と思ったのが始まりでした。プレーンなシルバーのアクセサリーで、ボリュームはあるけど、メンズライクすぎないものというコンセプトは最初からありました。本格的にスタートしたのは2015年にイギリスから日本に帰国してから。最初の1年間は運営がなかなか難しかったのですが、モデルをしている友人が着用した写真をインスタグラムにアップしてくれたことからフォロワーが増えていき、知ってくださる方が増えました。当時はまだ、今ほどインフルエンサーがいなかったので驚きました。直後に伊勢丹の合同ポップアップに声をかけていただき出店しました。ファーストコレクションは1点のみ。いまはもう展開していないのですが、3連リングを作りました。一本勝負でいこうと思って(笑)。どこかアン ドゥムルメステールの5連リングへの思いもあったのかもしれません」
ASAMIFUJIKAWAのジュエリーの特徴
「シンプル、ミニマル、女性的な曲線美でしょうか。ブランドコンセプトは、“ATTENTIVENESS TO SIMPLICITY”。直訳すると、“シンプルさへのこだわり”です」
デザインのインスピレーションソースについて
「日常で見つけたもの、これまで生きてきて見たものや感じたものの蓄積や記憶から掘り起こしていくことが多いです。だいたい頭の中にあるぼんやりした抽象的なもので、それらをかけ合わせていってイメージを膨らませていきます。モチーフ選びもその延長です。 女性像はないのですが、黒いドレスに似合うジュエリーを作りたいという思いは常に念頭にあります」
24AWのコレクションのテーマは「歪み」
「Distortionシリーズは、とある美術館でインドのアーティストの作品を鑑賞した際に、ヒンドゥー語の文字の形に面白さを感じ、文字をコレクションに取り入れたいと思いました。いろいろとリサーチを進めていくうちに、象形文字にたどり着いたんです。その中で、視覚的に形が美しいと思ったいくつかの文字をリングやピアスにデザインに落とし込みました。そういった、個人的な日々の気づきをジュエリーに取り入れるのが好きです」
子どもから得た新たな視点をヒントに
「これまで、博物館やギャラリーへは好きなアーティストのエキシビジョンに行くことが多かったのですが、最近は子供が喜びそうなてエキシビジョンに行くことが増え、日常に当たり前にあって目に留めてこなかった物事を身近に感じるようになりました。子どもから新しいヒントや自分の引き出しにはなかった視点をもらっています。思えば、世の中の形や柄、ほとんどのものの大元は自然界の形に影響を受けているのかもしれません。人工的な直線より有機的な曲線を好むのも、自然なことなのかなと」
(Numero.jp「シルバーを愛するデザイナーが作る、黒いドレスに似合うジュエリー」より抜粋。全文はこちら)
Photos:Kouki Hayashi, ASAMIFUJIKAWA
Interview&Text:Aika Kawada
Edit:Masumi Sasaki