平野千明《JUNK 03 》原画（額装付き）

白と黒の紙の重なり、カッターナイフ一つで精巧緻密に像を切り出すアーティスト平野千明（CHIAKI HIRANO）による「現代型進化論」シリーズの新作。

ミジンコモチーフの作品＜DAPHNIA (ダフニア)＞を「生成」する過程の中で誕生した未完成の作品群＜JUNK＞

「ミジンコには、自分と同じクローンしか産まない単為生殖期と、交配して子孫を残す有性生殖期があります。一般的に、通常はメスを産み、生存危機が迫ったときにだけオスを産んで交配するといわれています。そんなミジンコのもつ適応能力と人類の不可逆的な進化を一種のメタファーとして表現しました」

平野千明の創作活動の根底には生命、人間の存在があります。現代型進化論と名付けたシリーズは、昆虫や動物のモチーフを無機質な機械部品の集合体で構成。複雑なディテールの作品に込めた本質は、紙という平面媒体を切り開き、切り出すという行為そのものにあります。白と黒のレイヤーによる造形を通して、人間が起こした進化の形を浮き彫りにしています。

平野千明のメッセージ

「地球の歴史は長く46億年という歳月の中で様々な生物が誕生しては消えていきました。地球は太陽系の星の中でただひとつ、生命が存在する星といわれています。
地球ではじめての生命は約35億年前、海の中で誕生しました。やがてバクテリアがあらわれ、太陽光をエネルギーに光合成をして酸素を出すようになりました。こうして大気中に酸素がたくわえられ、生き物が住める環境が整っていったのです。
約4億年前になると、植物が海から陸にあがり、続いてこん虫や両生類が陸にあがりました。その後、恐竜やほにゅう類があらわれ、約500万年前にわたしたちの祖先である人類が登場しました。現代では我々、人類が地球上の覇者のように振る舞っていますが、地球が存在している期間を24時間と換算すると我々が存在している時間は1秒にも満たない微小な時間です。それは恐竜が栄えた1億年という期間と比べてもその時間の短さを感じることができます。そのごく僅かな時間の中で人類は地球に深刻な影響を与えました。
現代型進化論でも唱えているように人類は地球上で唯一自然を壊すことを選択し、新たな進化の形を模索したのです」